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11. アメリカ医療の基礎知識 (その3) - 医薬品について 1)アメリカの病院や診療所では薬をもらえない? アメリカでは医薬分業が徹底しています。医師自身が患者さんに薬品を直接販売することは、法律で禁じられています。従って、処方薬を必要とする場合には、市中の薬局にて患者さん自身が購入する必要があります。この際、医師あるいは医療機関が、患者さんに特定の薬局を指定し、誘導することも法的に禁じられています。この医薬分業制度は、処方のダブルチェック、重複投与や相互作用のチェック、アレルギーの薬歴管理、服薬指導、副作用などの薬剤情報提供、副作用のモニタリングなどを目的としており、患者さんを薬の副作用から守るためのものです。 2) アメリカで医師を訪れると、市販の薬を飲みなさいと指示されることが少なくありません。 アメリカの薬には、医師の処方箋を必要とする処方薬と、患者さんが薬局で自由に購入できる市販薬があります。多くの市販薬は、長い間処方薬として活躍し、その安全性、有効性が証明されたことにより、一般の人でも自由に購入できるように変更されたものです。アメリカでは、糖尿病治療のための注射薬であるインスリンも市販薬として販売されています。患者さんからみれば、この制度により、より新しく、より強い作用の期待できる薬を安価に入手できることになります。ただし、抗生物質、降圧剤など、その投薬方法に専門的知識を必要とする薬は、アメリカでも市販されていません。 3)医師のオフィスでよく薬のサンプルをもらうのですが。 製薬会社は自社薬の宣伝のために、医師オフィスに薬品のサンプルを提供します。医師は自分の患者さんに適切であると判断した場合に、そのサンプル薬を無料で提供します。医師がそれにより製薬会社より謝礼を受け取るなどのことは一切ありません。このサンプル品は市販の処方薬と全く同じですので、効果は全く同じです。 4)市販の同じ内容の薬でもその価格に大きな違いがあります。 市販薬にも、処方薬にも、ブランド薬(BLAND)とジェネリック薬(GENERIC)があります。ブランド薬は、その薬をオリジナルに開発した製薬会社により発売されている薬です。ジェネリック薬は、ブランド薬の特許の期限が切れた後に、別の製薬会社により製造、販売されている薬です。製剤の性状が異なることがありますが、いずれもFDAにより認可されたものですので、一般的には成分名が同じであれば製造会社が違っても、基本的には同じ薬と考えていいでしょう。通常、ジェネリック薬はブランド薬に比べ、その価格がかなり低く設定されています。 5) フォーミュラリ薬とは? フォーミュラリとは保険会社による保険支払い対象医薬品のことで、保険会社が独自に定めています。保険会社は、フォーミュラリリストへの収載を条件として製薬会社と価格交渉をし、患者さんへの給付金(BENEFIT)節減のために、医師に対してできるだけこのフォーミュラリ薬を処方するよう働きかけます。以前は、フォーミュラリ薬しか給付を認めないとする厳しい保険会社もありましたが、現在は多くの場合一応すべての薬について給付は認めるものの、フォーミュラリ薬以外についてはより高額な自己負担を求めたり、あるいはフォーミュラリ薬をまず投与してみて、それが効かない場合に保険会社の事前の承諾(PREAUTHORIZATION)を得た上でフォーミュラリ以外の投薬を認める、という方針の保険会社がほとんどです。 6) アメリカでは、薬局により処方薬の値段が異なります。 日本では全国一律の薬価基準が適応されるため、全国どこの医療機関や薬局で医薬品を購入しても、その値段は均一です。一方、アメリカは自由競争の国です。これは薬の販売についても同じです。外来処方薬をカバーするアメリカの医療保険をお持ちの方は、その契約内容にもよりますが、一般にCOPAYといわれる一定の自己負担金を支払えば、残りは保険会社が支払いをしてくれますので、どの薬局でも個人の支払い額は変わりません。ただし、その自己負担金は、ブランド薬とジェネリック薬で異なります。 7) メールオーダーによる薬の購入とは? 処方箋をメールオーダー会社に郵送あるいはファックスで送付することにより、薬品をオーダーします。一般には、患者さん自身が処方箋を送りますが、医師オフィスが直接処方箋を提出しなければならないという制限の付くこともあります。購入先は保険会社により指定されることもありますし、患者さんが自分で選択できることもあります。メールオーダー会社は卸を経由せずに、製薬会社と直接取引し大量に薬品を購入しているため、患者さんは、一般に市中の薬局よりも安価に薬を購入することができます。メールオーダー方式による薬の購入は廉価であるため、その利用を促進するため、この方法で処方薬を購入した場合には患者負担の軽減をする、などの措置を講じている医療保険やプランもあります。 8) アメリカではインターネットで処方薬を購入することができます。 属にいう「インターネット薬局」のことです。いわゆるメールオーダーによる処方薬の購入と同様に、遠隔地にある薬局に購入を申し込みます。最近のリサーチでは、1400以上のインターネット薬局があるらしいと報告されています。薬品の申し込みの手続きは、(1)支払い者の特定(医療保険か、自己負担か)、(2)個人ファイルの作成(既往歴、常用薬、薬アレルギーの有無などが重要)、(3)処方箋の提出(郵送あるいはファックス)、および(4)会計、の過程からなります。オーダーから、実際に薬を受け取りまでの日数は、一般に2-5日です。 9) カナダからの薬の購入について アメリカの処方薬の高騰が続くなかで、カナダから処方薬を入手しようとする動きがみられています。これには、高騰する処方薬の費用が、慢性疾患を持つ特に高齢の患者さんの毎月の生活費を圧迫しているという背景があります。カナダでは処方薬の価格は日本と同様、政府が決定する公定価格になっており、アメリカの薬に比べて平均70%ほど低価格です。 10)インターネットを通じた違法売薬商法について ヘルスケアサービスにおいても、インターネットの普及は目覚ましく、健康関連の情報の提供ばかりではなく、インターネット薬局での薬の購入などを始めとして、各種の医療サービスも広く普及してきています。 |